株式会社ISOWAさんは、1920年創業の段ボールを製造する機械の専門メーカーで、国内トップブランド。
創業100周年ということで、先日、常務取締役の中村淳二さんから『創立百周年記念誌』を贈っていただきました。かつて、スコラ・コンサルト時代に少しだけ戦略づくり対話の支援(主担当は元スコラ社長の高橋秀紀さん。現在はISOWA監査役)をさせていただいたご縁からです。
おめでとうございます!!!
斬新な体裁!しかも、その中身はもっとすごい!!
社長の磯輪英之さんが、2006年に「世界一社風のいい会社を目指そう!」を経営理念として掲げ、全社員で本気で取り組んだことで、その領域では知らない人はいないほど存在を知られた会社。
でも、天邪鬼な僕は、他でさんざん語られている風土改革のことには触れません(笑)。
この百年誌を読んでもっとも注目したのは、磯輪社長の書いた「エピローグ」です。渾身の研ぎ澄まされた「戦略」論が展開されていました。
お伝えしたいのは、卓越した企業風土で知られる会社が、百年誌のラストに、これまでの歴史にも根ざしたとっておきの未来「戦略」を描いているという点。ウチにしかできないという自信の現れであろうとお察しします。こんな記念誌、初めて!!
今回は、そのことを公開情報の範囲内で記したいと思います。(http://www.scholar.co.jp/fudo/detail.php?id=8&page=1)
この情報はスコラのホームページに掲載されているもので、取材時は僕も関わらせていただきました。
2001年に社長に就任されて以来、一心不乱に風土改革に取り組んできた磯輪さんは、それによって地盤を整えた上で、満を持して「ISOWAは止めません、止まりません」というミッションを2011年に掲げ、
2014年には「戦略言語化ミーティング」によって、それを事業戦略に転化していくことに舵を切ります。
これには、新たな戦略への取組みスタートいう意味合いだけでなく、次世代の経営を担う人たちをこの局面で巻き込み、戦略策定とともに幹部育成を同時に実現したいという想いや狙いもあったと言います。
ISOWA戦略のすごさは、「ISOWAは止めません、止まりません」をガチに体現しようとしていることにあります。
言葉では、機械が止まらないようにするのは当たり前だと捉えられるかもしれません。が、装置産業では、機械を導入したときから経時的な性能の劣化が必然的に起こります。
その劣化が、機械の故障や停止を招くわけで、そのときの機械復旧コストや段ボール生産遅れによる予定外の生産・配送コストをはじめ、顧客の信頼を失うリスクなども出てきます。
なので、そうやって機械は止まってしまうのだという一般的常識を、「止めません、止まりません」へパラダイムシフトしていくには、従来とは明らかに違う研ぎ澄まされた戦略が必要になってきます。
前述した機械の故障や停止によって発生するさまざまなコストを目に見えるカタチでトータルに試算し、それを上回るコストパフォーマンスを具体的に実現するしくみまでを創り上げ、そこに共感するお客様とともに新たな価値を共創しているのがISOWAさんなんですね。
しくみというのは、メンテナンスサービス等の業務プロセスだけでなく、当然、常識を超えるそのようなサービスを実現できる人財の育成や活用までも含みます。
「一見すると非合理的で他はマネしようとしないが、戦略全体の文脈では筋のよいストーリーになっている」という模倣困難性の戦略ストーリー論を地で行ってます!!
僕は、その組織や事業の状況を観るのに「マネジメントらしんばん」を使っていますが、
https://tongari-team.com/theory/1340/
このフレームに照らしても、ISOWAさんの打ち手は極めて理にかなっていると言えます。
風土改革に着手→ありたい姿をミッションに→そのミッションを実現するための戦略を言語化→その戦略を運用するしくみ新設→豊かに育った風土をもとにより高いレベルの次なるサイクルを回していく。
マネジメントらしんばんをこれほど本質的に回している組織を他に知りません。