今回は、とんがり研の自律分散チーム論(4回)の3回目です。
前回は、一人ひとりの「らしさ」が解き放たれる初期フェーズの話をしましたがいよいよ核心部分です。そして、最もモヤモヤするところかも(笑)
きっとこんなモヤモヤや不安が出てくるのでは。
クライアント企業との対話で頻出する「あるある」でもあります。
・一人ひとりがらしさを追い求めるようになったら組織の目標はそっちのけになるのでは?
・やはり、組織の目的や目標を先に提示する方がうまくいくように思うが・・・
・一人ひとりが自己主張を始めたら、衝突や対立も増えマネジメントコストが大幅にアップしてしまうリスクがありそう。
どれも、現場視点からすれば、合理性のある見方だと思います。
で、結局は、それらの不安を払拭するのにある一定の枠にはめて、考えるなり、行動することを求めるという判断になりがち。
でも、それでは既存の延長線上の発想しか出てこないというジレンマを抱えることに。
ここで、ちょっと質問させてください!
「らしさ」を考えるとき、エゴ(Ego)とセルフ(Self)のどちらで捉えていますか?
エゴ(Ego)は、自己中心的・自己保存的な側面の欲求で、支配欲や争いなどを生みがちなものです。
セルフ(Self)は、個人の内奥にある本質的・根源的な欲求で、たとえば、つながり、自立、意味、あそび、平和など。
もちろん、人間ですから、その両面を持っているわけですが、前述のような不安は、主にはエゴ(Ego)の視点で捉えたものでしょう。
でも、自律分散チームの本質を体現するためには、一人ひとりのセルフ(Self)がどこにあるのかに注目しながら
チームにとって不可欠な「論点」(issue)を研ぎ澄ませていき合意できる最善解を見つけていくことが求められます。
論点については名著『イシューからはじめよ』の安宅和人さんの定義が役立ちます。
(a)2つ以上の集団の間で決着のついていない問題
(b)根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題
ここまでの文脈で言えば、チームメンバーがセルフ(Self)を軸に考える環境の中で、(a)と(b)を満たすようなテーマを炙り出していくのです。
テーマがテーマなだけに、そこには「矛盾・葛藤」がつきものですが、セルフ(Self)に集中すれば、混迷や空中分解することなく、解に到達しやすくなります。
自分たちだけで実践できるようになるまでの前段階で、外部のファシリテーターがサポートするのもありかもしれません。
例えば、あるクライアント企業で自社のパーパスをつくろうという場で、大事なキーワードとして「好奇心」が抽出されました。
そこまでは合意されたものの、そこに「知的」を入れるか入れないかで意見が分かれました。
好奇心とは、珍しいことや未知のことなどに広く興味を持つことです。
一方、知的好奇心は、その中でもより物事の本質を探究するというニュアンスが付加します。
これは、ただの言葉選びの問題ではなく、どちらを選ぶかで顧客ターゲットが大きく変わってくることがわかってきました。
結局、幅広い好奇心よりも、知の探究を軸にお客様との共創を目指す方向が定まりました。
矛盾・葛藤を含むテーマも、論点をうまく扱えば創造的な解決の源になりえます。
さぁ、次回はこの連載の最終回。矛盾・葛藤を越え、見えてきた方向性を実践可能な状態に持っていくための「物語り」に仕立てられるか?
ご期待ください!