今回は(も?)ちょっと物議を醸すお話をします。
先日、大々的に行われた人的資本経営のセミナーを視聴しました。
この領域で進んでいる日本企業の取組みに目を見張りました。が、一方で、そこはかとなく起ち上がってくる違和感も覚えました。
これって、かつて僕が日本企業から米国のメガ企業に移籍したときに圧倒された、合理性にもとづく欧米的経営に近づいてるだけでは?
それをいまさら追求しても世界で勝ち続けられるのか?
つまり、資本としての人財の価値を再認識し、顧客価値を高めるための経営戦略にもとづいて、社内のジョブ体系を整備し、
それぞれのジョブ実行に不足するスキルを特定して、リスキリングに取組みますという図式はわかりやすいけれど・・・
僕が日本的経営のよさと感じている現場一人ひとりの想いや持ち味を大事に生かすという考え方がメンバーシップ型雇用は旧いとばかりに消滅してしまっては元も子もない。
前述のセミナーの中で、このような僕の問題意識に光を与えてくださったのが、一橋ビジネススクールの楠木建先生でした。
「究極の人的資本経営とは個人が“好き嫌い”を語り、経営がそれを汲み取り、“好き”な仕事を思い切り凝ってやれる状態。それが生産性を高める最上のアプローチ」だと喝破されました。
当日のセミナーラインナップの中では明らかに異色でしたが(笑)
で、ここで言う“好き嫌い”が、今回の主題である「センス」(=状況を的確に把握し、適切な行動を取るための直感的な能力)につながってきます。
先生は「スキル VS センス」として以下の対比をされました。
スキルは、特定の物差しの上で量の多寡を示せるが
センスは、物差しがないから示せない。
スキルは、フィードバックがかかるが、
センスは、それ自体ではフィードバックがかからない。
スキルは、投入努力と成果の因果関係が明確だが
センスは、投入努力と成果の因果関係が不明確だ。
つまり、スキルは誰が見ても“良し悪し”で判断できるが、センスは“好き嫌い”の世界である。
ここに着目することが、組織として創造性を発揮する道、すなわち、他社と差別化を図る競争優位の源泉になると。
実際問題、センスを育てるための標準的な開発方法はありません。
が、いま、僕が注力しているシゴトのすべては、この目に見えにくいセンスの開発に向けたものと言えるかもと感じています。
追伸:
もちろん、スキルが大事なことは言うまでもないことで、楠木先生も「センス×スキル=仕事の成果」と定義されています。念のため