僕が理事を務める産学連携シンクタンク iU組織研究機構」では、上場企業CHRO3人による”泥臭い”人的資本経営の研究会を開催中です。
この会は、経営課題と組織課題が交差する重要な局面で、強い意思を持った人事責任者が集まり、直面する実態や課題を深く掘り下げることで、本質的な実務知見を創出し、世の中に一石を投じるもの。
会の中で、JストリームのCHRO田中潤さんから「人事戦略は経営戦略のサブシステムから考えるべき」という発言がありました。
人材版伊藤レポートでも筆頭に掲げられる「経営戦略と人事戦略の連動」。これは当たり前のことかもしれませんが、実態はどうでしょうか。
人的資本経営の開示情報で優良だと紹介される企業も、ほとんどは人事戦略から記述がなされており、それがどんな経営戦略・事業戦略を実現するためのものかを明示したものはほぼ目にしません。
この状況に僕は強い違和感を覚えています。
一方で、業界業種を問わず、多くの企業が本質的な経営・事業戦略の大転換を模索していますね。
その方向性は、既存の主力事業による提供価値の維持ではなく、新たな価値創造が主題となっているように感じています。
もはや、人事制度をいじるような従来型のしくみアプローチでは明らかに限界があります。
激変する環境の中で”わからなさ”に対峙しながら、これまでにない思考・行動パターンへ組織として踏み出すことが求められているのです。
僕の提唱するクリエイティブファシリテーションも、手前味噌ですがまさにこのような可能性を創発するプロセスに寄与するものです。
人的資本経営の本質的な実務知見をこの研究会でぜひ見出すところまで行きたいところです。
さて、田中潤さんとの縁は、僕が1995年に日清製粉の人事部に事業部から異動したときにさかのぼります。
当時3つ年上の先輩で、30歳そこそこながら人事部の動きを文字通り主導していた彼との出会いが、僕の30年にわたる人と組織にかかわる仕事の原点です。
そして今、その縁が新たな形で結びつき、未来の人事戦略の在り方を共に探求しています。