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つくるか、生まれるか〜生成と創発で解き放つチームの創造性

還暦を迎えて、ふと気づいたことがあります。

なぜ僕はこれほどまでに「創発」という概念に惹かれるのだろうか。

その答えは、選択の余地が一切なかった少年時代の記憶に根ざしているようです。

すべて親の言うとおりにしなければならず、できないときは暴力で強制され、自分の意思が完全に封じられた暗黒の時代。

でも、その経験があったからこそ自然に生まれる自由な力への憧憬を抱き続けてきたことに気づき、それが人生を通じたパーパスなのだと認識するようになりました。

今日は、クリエイティブなチームの創造性を解き放つために欠かせない「生成」と「創発」という二つの概念についてお話しします。

「つくるか、生まれるか」という根本的な問いです。

どちらも聞き慣れない言葉かもしれませんが、実はとても身近で、そして深い意味を持つものです。

まず「創発」から説明しましょう。

創発の英語”emerge” は自動詞です。つまり、誰かが何かを創発させるのではなく、創発は自然に起こるのです。

誰かが意図したわけではないのに、いつの間にか現れる。予期しない化学反応のように、複数の要素が組み合わさって、まったく新しい何かが生まれる現象です。

例えば、雑談の中からふと素晴らしいアイデアが浮かんだり、偶然の出会いから新しいプロジェクトが始まったりする瞬間がそれです。

一方、「生成」の英語”generate”は他動詞です。つまり、誰かが意図的に何かを生成するのです。

ただし、これは機械的に計画を実行するという意味ではありません。むしろ、斬新なことが出現するようなプロセスを意図的に創出することです。

新しい可能性を引き出すための仕組みを設計したり、人と人との対話を通じて新たな視点を生み出したりする。

よき偶然を呼び込むための必然を作ることと言ってもいいかもしれません。

この二つは対立するものではありません。

生成があるからこそ創発が起こり、創発があるからこそ次の生成が生まれるという、螺旋のような関係にあります。

クリエイティブなチームでは、この両方の力でチームの創造性を解き放つことができます。

生成の力で、メンバーが自由に発言できる場をつくり、多様な視点が交わる機会を設計します。

すると創発の力で、誰も予想できなかった新しいアイデアや解決策が自然に生まれてくるのです。

つくることと生まれることの絶妙なバランスが、チームの可能性を最大限に引き出すのです。

僕自身は創発寄りの特性があることを自覚しています。だからこそ、意識的に生成のプロセスにも目を向ける重要性を感じています。

自分のバイアスを理解しながらチーム全体のバランスを考える。

これが僕なりのチームづくりの哲学です。

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