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「やっぱり研修は対面が一番」?~インストラクショナルデザインのススメ~

オフィス出社への回帰と歩調を合わせるように、対面研修への回帰も進んでいるようです。

各方面から聞く話を裏付ける様々な調査データも出ていますね。

僕自身は対面、オンラインの特性を考慮してクライアントに選択してもらうことを重視しています。目的や状況に応じた最適な選択肢を提供することが大切ですから。

オンラインに不利な状況なので、改めて3つの重要な特性を挙げておきます。

まず「越境性」です。地理的制約なく多様な人が即つながることができ、普段なら出会えない専門性や経験を持つメンバーとの対話が実現します。

次に「フラット性」。画面上では(対面に比べ)役職などの階層を感じにくく、年齢や立場ではなく発言内容そのもので議論できる環境が生まれます。

そして「メタ認知性」です。自分を客観視しやすく内省が促されるため、普段気づかない自分の思考パターンや感情に向き合える機会が増えます。

これらの特性を戦略的に活用すれば、対面にできないことも可能になります。

一方、対面研修には高揚感や一体感を得やすいという利点があります。その場の熱気や雰囲気で参加者のモチベーションが高まりやすく、グループワークでの一体感も生まれやすいです。

しかし、この高揚感が「やった感」につながり、肝心の教える設計があやふやでもごまかせてしまうという面もあります。

コロナのときにオンラインに移行したことで、そのごまかしが効かない環境となり、研修設計の甘さが明らかになったケースも少なくありませんでした。

結局は、どう学びをデザインするかが肝心です。ここで参考になるのが、「インストラクショナルデザイン(ID)」の考え方です。

その第一人者、元・早稲田大学教授の向後千春さんによれば、IDとは教え方のデザイン、教え方を設計する技術と定義されます。

ID設計には5つの重要な要素があります。

「ニーズ」(学習の動機づけとなるもの)、「ゴール」(具体的な学習成果)、「リソース」(教材や資料)、「活動」(学習者が行う学習活動)、そして「フィードバック」(学びへの反応)です。

これらが有機的に組み合わさることで、効果的な学びが実現します。

なかでも起点になるのは、組織および個の「ニーズ」の深い洞察です。何を学ぶべきか、どのようなスキルを身につけるべきかを明確にしないと、研修の効果は限定的になってしまいます。

これに応える「リソース」として、対面とオンラインのどちらが相応しいのかを決めるのが筋ということですね。

IDは「教え方のデザイン」であり、僕が実践している「学び合いのデザイン」とは少し異なる部分があります。

が、上記の5要素で見た場合、違いは「活動」の設計アプローチを、対話を軸に行っていることだけです。

基本的な考え方は共通しており、効果的な研修を設計する上で参考にできそうです。

対面研修への回帰というトレンドを見ると、「やっぱり対面が一番」という声が聞こえてきますが、大切なのは形式ではなく本質です。

トレンドに流されるのではなく、常に「なぜ」を問い続け、学びの本質を見失わない姿勢こそが、これからの研修設計者に求められる視点ではないかと思いますがいかがでしょうか?

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