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企業内キャリア研修の盲点

僕はキャリア研修を企業向けおよび個人向けの両方で行っているのですが、これまではあえて両者を分けない考え方をとってきました。

しかし今年、企業内キャリア研修のフォローアップとして、複数社の上司層へのアプローチを重点的に担ったことから、考えが大きく変わりました。

改めて認識したのは、企業内研修と個人向け研修は、本来的に異なるニーズがベースにあるということです。

企業内研修は、組織の方向性や役割期待の中で「どう貢献し成長するか」を考える場です。

一方、個人向け研修は、組織の枠を離れ「自分は何を大切に、どう生き働くか」を探究する場。

前者が組織文脈での主体性、後者が人生文脈での自己実現をめざすという違いがあります。

ここで再確認したいのが、企業研修としてのキャリア研修は、個にフォーカスしながらも、それが組織にどう還元されるかまでデザインしないと意味がないということです。

なぜか。もし個人の内省だけで終わってしまうと、研修で得た気づきや想いが、職場に戻ったときに行き場を失ってしまうからです。

「自分はこう働きたい」と思っても、それを今の仕事や組織での役割とどう結びつけるかが見えなければ、かえって葛藤が生まれます。

結果として、研修は「いい話を聞いた」で終わり、行動変容につながりません。

これは依頼者である企業にとって投資対効果が低いだけでなく、個人にとっても「気づいたのに動けない」というモヤモヤを残すことになります。

つまり、個のキャリアオーナーシップを本当の意味で育むには、「自分らしさ」を起点にしながら、それを「組織や仕事の中でどう発揮するか」という具体的な道筋まで一緒に考える必要があるのです。

ただし、ここに大きな落とし穴があります。

これまでの企業内研修は、組織還元を意識するあまり、外的キャリア(職務経験、異動希望など)中心になってしまい、個の新たな発見や可能性を生みにくいものでした。

近年では内的キャリア(価値観や動機)を重視する方向へ舵を切るところも出てきていますが、目に見えにくいものだけに、組織ニーズとの接続が難しい。

この2点が「盲点」です。

後者を機能させるには、組織内の対話や関係性づくりに加え、戦略・制度・しくみとの連動が欠かせません。

ちなみに、とんがり研のマインドフルカフェ®︎は、内的キャリアを起点にしながら目の前の仕事に橋を架けるというコンセプトで創業間もない2018年に開発したものです。

当初は通常の企業内キャリア研修とのあまりの違いから受注に苦労しましたが、ここに来て研修後のフォローアップも含めかなり案件が増えてきました。

これは、個と組織をつなぐアプローチが時代背景に合ってきたからかなと感じています。

企業内キャリア研修の盲点に気づき、そこを埋める設計ができるかどうか。ここが、これからのキャリア支援の分かれ道になると僕は考えています。

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