ある企業から研修のご相談をいただきました。
管理職が、人により向き合えるようにしたい。問いかける力を高めたい。対話の質を上げたい。
プロジェクトを動かす力は高い。しかし、人に対する関わりについては、十分とは言えない。だからスキルを磨きたい。
とても妥当で、健全な問題提起です。
問いかけの型、対話の技法や具体的な実践方法。それらは確実に力になるでしょう。
ただ、ここで見落とされがちなのは、スキルや知識を“知ること”と、現場で“使える状態になること”のあいだには、大きな隔たりがあるという事実です。
人に向き合うというテーマは、何がどうなればうまくいったと言えるのか、立場や状況によって揺れます。
「よい関わり」とは何か。
管理職の責任はどこまでか。
成果と成長、どちらを優先するのか。
そもそもの前提が一つに定まらない。
つまり、このテーマは「厄介な問題」の性質を帯びているのです。
僕は最近、この一点をあえて前面に出しています。「厄介な問題」は、スキルを足せば解ける、という構造ではありません。
なぜなら、前提そのものが揺れているからです。なので、僕は研修を“答えの注入”にはしません。かわりに、パターン・ランゲージを提案しようかと。
パターン・ランゲージとは、よい実践のコツを抽出して共有する方法です。
なぜそれが重要なのか(know-why)を織り込み、
何が判断軸になるのか(know-what)を共有し、
現場ごとの具体的なやり方(know-how)を
自分たちで組み立てられるようにする枠組みです。
パターンは、唯一の正解を示すものではありません。状況ごとに選び取れる行動の型を共有するものです。
「問いで支える」「事実と解釈を分ける」「小さく試す」
こうしたパターンを共通言語にすることで、管理職同士が自分の現場の知恵を持ち寄り、選び直し続けられる状態をつくります。
「厄介な問題」に対して有効なのは、万能薬ではなく、学習し続ける構造です。
パターン・ランゲージは、その構造を組織に埋め込むための方法論です。
とんがり研ホームページのキャッチを「厄介な問題」をチームの力に!へ刷新したのは、その立ち位置を明確にするためでした。
スキルを磨くことは大切です。同時に、そのスキルをどう使い続けるかが問われています。
「厄介な問題」は、説明するための言葉ではありません。引き受けるための言葉です。
今回のご相談もまた、その入り口に立っているのだと感じています。
