大手企業のある事業部のリーダーたちが普段なかなか手をつけられない
『7つの習慣』の「第二領域」(重要だが緊急ではない)のテーマを、自らプロジェクト化し、一歩踏み出すまでの伴走を3ヶ月やってきました。
「答えの見えないことについてメンバーに投げかけることに、怖さや恥ずかしさを当初感じた」とのふりかえりコメント。
よくわからない中で不確かなことを言うと、その程度かと思われるのではといった感情もあったようです。
でも、結果として、投げかけてみたら自分たちもよくわからないことへの共感が予想外に集まって驚いたと。
モヤモヤしている状況ではそれをなんとかしたいと、みな思うのでしょうね。
KJ法という発想法を開発した川喜田二郎さん著『創造性とは何か』の中に
「私たちが、これまでまったく経験したことのない難問題にぶつかったとき最初に来るのは渾沌であって」「創造はその渾沌から出発する」とあります。
ただ、ここで大事なことは、いきなりどうやって解決するかと急がないこと。
この渾沌の中に自ら浸かって、ありのままにその本質をつかまえることだと僕は考えています。
そうそう、渾沌にまつわる古代の物語りをご存知ですか?
南の海の支配者シュクと北の海の支配者コツが「渾沌」の支配する世界の真ん中で巡り合った。
渾沌が二人を大いにもてなしたことにいたく感激して、シュクとコツは、人間にある7つの穴(口や鼻など)が渾沌にひとつもないのを見て、
ご恩返しに、日にひとつずつ7日にわたって穴を掘っていったが、とたんに渾沌は死んでしまったと。
『荘子』に出てくる説話です。
渾沌は大いなる無秩序であり、あらゆる矛盾をそのままひとつに包み込むことに存在の意味があったのに、穴(機能?)の付与がそれを台無しにしてしまったのですね。
~多田道太郎さん著『遊びと日本人』より
冒頭に触れた事業部リーダーのひとりは、ハイエンドのマシンを市場投入したのに、不具合のクレームが多いので
その対応に当たっているサービスエンジニアが効率的に働ける環境づくりをプロジェクトテーマに選びました。
最初は不具合の情報をより整備して活用されることを検討していましたが、既に技術的課題は情報としてかなり整っているのになぜ問題が起きるのかに向き合うことになりました。
報告書やデータベースには載っていないが、実はエンジニアたちが自分の仕事に誇りや達成感を持っていない言動が、現場に行くとよく見られるので、
そこにもっと着目して問題を探ってみることになりました。
答えの見えにくいモヤモヤに真摯に向き合う思考・行動が、突破口を ひらいていくはずです。