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ファシリテーションは何を“容易に”するものか

ファシリテーションは、企業・地域・学校など多くの場所で身につけるべきスキルとされており、普及が広がっています。

ファシリテーションとは・・・

「人々が集まって学んだり、何かを一緒に考えたり、創ったりする時に、1人ひとりの多様な思いや知恵や力を認めて活かし、

前向きな相互作用を引き出して、お互いに学び合うことを支援する技法」(中野民夫さん)です。

でも、実際にファシリテーションを行ってみると、こんな課題に直面することはありませんか?

  • 多くのアイデアが出ても、表面的で魅力に欠ける
  • 参加者の本気のコミットメントを引き出すのが難しい
  • 個々の多様性が反映されにくく似たような意見に偏りがち

巷には、ファシリテーションのさまざまな技法がありますが、それらをいくら身につけてもあまり意味がないと僕は思います。

なぜならば、そこではあるひとつのマインドが支配しているからです。

テーマにかかわる状況が、わかりにくい場合、「そこから早く抜け出してわかりたい」という欲求です。

気持ちとしてわからなくはないのですが、昨今、取り上げるテーマや問題は、何がどうなれば解決なのかもわかりにくい複雑なものばかりです。

結局、いま見えている情報だけを切り取って、とりあえずアイデアや意見を出しても「それ、いいね!」という仮説はなかなか生まれません。

ファシリテーションの語源はラテン語の”facile(容易な)”にあり、容易にすることがファシリテーションの本質のようです。

でも、何を容易にすればいいのでしょうか?

  • 本来は複雑なものを切り取って、容易に見せるファシリテーションでしょうか?
  • わからなさに留まりながら、そこに潜む要素や関係性の本質を見出すことを容易にするファシリテーションでしょうか?

先日、ある場でファシリテーションの15分ほどのデモをやりました。もっと時間があれば・・・でしたが、それでも結構やれるものです。

お題は「日本の死刑制度について賛成か反対か?その理由は?」

ちなみに、参加者には死刑制度をめぐる国内外の状況をA4・1枚に簡単に整理した資料に事前に目を通してもらっていました。

5人のグループで賛成は2人、反対は3人でした。

賛成の理由は・・・

・犯罪の抑止効果があるから

・殺人という人権侵害の報いを受けるべきだから

反対の理由は・・・

・犯罪の抑制効果がないから

・どんな人でもやり直せるから

さまざまな意見が出たところで、反対が過半数という結論づけることもできます。

が、それでは大事な対話の論点が失われてしまいますよね。

賛成か反対かを判断するときに、抑止力という効果性に注目した人もいれば、人権という原理性を大事にした人もいました。

効果性に注目した人も、抑止力があるか、ないかで割れました。

原理性に着目した人も、人権の捉え方が違いました。

こんな風に捉えていくと、論点が複雑化してしまい、いったい結論が出るのだろうかと不安にもなります。

それでも大事だと見立てた論点の探究を諦めず、わからなさを受け容れながら、対話を深めるプロセスを促進できたとき

はじめて冒頭に挙げたような課題の解決に近づけると僕は考えています。

いかがでしょうか?

※このブログは、人類学者で現在は合同会社メッシュワーク代表をされている比嘉夏子さんの記事に触発されて書きました。

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