今回は3回シリーズでお伝えしてきた『禅的マネジメント』論の最終回です。
初回は、禅の真骨頂とも言える現実がどうなっているかを体で生々しく感じ取るsensingがなぜ現代に求められるのか?
2回目は、その手がかりとしての「十牛図」の叡智に学びました。
最終回は、そこから派生して盟友の小森谷浩志さんが考案したZEN MANAGEMENTサイクルで締めくくります。
十牛図はすばらしい概念ですが、あくまでもおおまかな地図であり深い理解には、やはり禅の素養も必要で、われわれの日常に活かすにはギャップがあるからです。
十牛図の概念にに西洋の実証的科学の知見を掛け合わせたところが、この方法論の出色なところです!
その知見が、ここ20〜30年で急速に研究が進んでいる成人発達領域の研究の成果ということになります。
その中から、重要になる3つの対になる切り口を抽出しています。
人間は、新たな知性を獲得する「差異化」と、もともと持っていたものと「統合」するプロセスを交互に繰り返していくというものがひとつ。
次に、「独自性」(自己の存在を主張し、個を確立)と、「交感性」(より大きな他者、組織、社会などに組み込まれていく自分)が行き来しながら、人間の発達は進展していくというもの。
これら2つの要素が作用し合い、さらに「内省」と「対話」という2軸が形成されるのが3つめの切り口になります。
「内省」とは、自己を省みることで日常の経験から意味を見出すこと。
「対話」とは、新しい視点や意味、アイデアが、共にここから生み出されるコミュニケーションのことです。
ZEN MANAGEMENTサイクルは、十牛図を5つの段階に束ねたものに、この成人発達論の知見である「内省」と「対話」の2軸を重ねてつくられたものです。
こんな流れになります。
【1段階:発見】
十牛図の①②③
社会的存在としての自分を形成する時期です。
よろいを身につけ、武器を手にして邁進しますが、やがて行き詰まり、自分は何者かの探究が始まっていきます。
【2段階:共生】
十牛図の④⑤⑥
自己の内側に目線を向けて内部充実を図ります。
これまで慣れ親しんできたゾーンを脱して、異質な価値観と出会い、これまで見えていなかった自己がより見えてきます。
【3段階:忘却】
十牛図の⑦⑧
これまで大事にしてきたことやこだわりを緩め、手放していきます。まとっていたよろいや武器も脱ぎ捨てます。
内と外を超越して、より大きな存在へと委ねていく段階。
【4段階:開花】
十牛図の⑨
生かされている実感とともに生きとき生けるものすべてとつながっている感覚に満たされている段階です。
【5段階:覚他】
十牛図の⑩
貢献すること、支援することに内側から湧き上がる喜びを感じます。
この段階は、終着点であるとともに出発点です。らせん状に次へとつながっていきます。
“禅的マネジメントschool”では、このような流れに合わせて現実世界に即した具体的な深い問いかけからこのサイクルの一つひとつのプロセスを味わっていくことになります。
いやいや、サイクルどころか、自分は一貫してよろいをまとって戦っているという方もいらっしゃるだろうし、それもアリだと思います。
ただ、違う選択肢や可能性もあると知ることにも意味があると思っています。