個々の小さな行為の重なりが「思うままに」を超えて、「思いもよらない」パワーや結果を生み出すことは、僕の専門とする“創発”の肝の部分です。
先日、息子と同じくらいの年代の若い友人と話し合うなかでそんな体験をしましたので、個人情報を守りながら要点を適度に抽象化してお伝えします。
K君は大手メーカーに勤務する技術者で、こんな悩みを相談されました。
論点は、個と組織の2つあると思いましたので、分けて記述していきますね。
【K君の悩み】
(個の視点)
自分には特性として過集中とムラがあると認識しているが、自分らしさを活かして働きたいといつも考えてきた。
が、顧客への納期厳守プレッシャーがますます強まる中で、それが守れないこともあり息苦しさを感じている。
(組織の視点)
そのように仕事のパフォーマンスが落ちると、関連他部署から人格否定のパワハラ的な言動があったりもするのでしかるべき機関に訴えることも考えている。
特に、後者の視点にウェイトが強くかかっていると感じたので、僕からは以下のように伝えました。
【AKIの考え】
(個の視点)
パワハラは決してあってはならないこと。一方で、K君の現在の考えは組織の視点から発想しすぎてないだろうか。
本来の自分らしく働きたいという想いがかえって埋没してしまうことになったら元も子もない。
自分らしく働くためにどうすればよいかの原点に立ち戻ってもいいかも。
(組織の視点)
一方で、高度に発達した資本主義社会では、大きなシステムが機能的に回るために、個や組織が動かざるを得ない側面は避けられないのでは。
多くの組織人がシステムの中でその機能を果たすべく努力しているという事情も理解すると、見え方が変わってくるかもしれない。
数日後にK君から来た返事にはびっくりしました。
僕の考えも参考にしながら、自分の考えと統合していたので。
【K君の結論】
(個の視点)
自分らしい働き方を諦めたくないので、組織というシステムの歯車になるのとは一線を画したい。
ただ、組織との折り合いをつける接点を探りながらも、いずれは組織を離れ一人で仕事していける準備も進める。
(組織の視点)
上司は、自分の仕事を減らして、他のメンバーに振るとも言ってくれているが、それで他者の負荷が増えてモチベーションが低下したり離職してしまうようなことはあってはならない。
組織としての仕事のしかたを見直せないかを上司と一緒に考えていきたい。
K君はこんなスタンスで上司との面談にも臨んだようで、基本的には、理解し受け容れてくださったとのこと。
おそらく読者のみなさんの中には、いろいろ論議もあろうかと思いますが、若手社員の離職急増というような社会事情もあるとはいえ
かつては決して成立しなかったような個と組織の関係がこのように模索されていくことに、ある可能性を感じています。
それを、個の自分らしい働き方に向けた行動からの組織変革と呼んでもいいような気持ちが僕の中にはあります。
いかがでしょうか?