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国別ワクチン接種率から考える「戦略論」

4/13東京新聞の記事より

2021.4.10現在、オックスフォード大の研究者らがつくるデータベースによると、上記のように、日本の新型コロナウィルスにワクチン接種は、欧米などに比べて大幅に遅れているようです。

ワクチンを生産するファイザーの欧州にある工場の能力不足、日本人への臨床試験の遅れ、スエズ運河のコンテナ船座礁による超低温冷凍庫の日本への到着遅れなどなど、個々にはその要因があげられるようですが、

僕は、日本政府の「戦略」が、海外諸国に対して劣っているからではないかと想像しています(事実情報が少ないのであくまでも推論です)。

随分昔の話になりますが、2000年11月に僕は日本企業から、アメリカの製薬企業A社日本法人に移籍しました。

このとき、一番痛感させられたのが、彼我の「戦略」性の違いでした。

当時、A社はX社を買収して、世界最大の製薬会社になったばかりでした。驚いたのは、入社直後に日本法人の人事部門に課せられた3ヶ月で中途採用でMRを600人確保せよという米国本社からのミッションでした。

普通に考えればどう考えても無理です(当時はいまよりも中途採用は一般的ではありませんでしたし)。

そして、驚くべき指令が。「明らかにダメな人材でなければ採用せよ」と(実際に明文化されてそう言われたのではなく、僕が受け取ったニュアンスです)。日本企業の人事部では、一人ひとりの候補者に向き合い、丁寧に採用プロセスを踏んでいた僕はほんとうにびっくりしました。

しかし、その指令の根拠は明確でした。われわれには、すぐれた「薬」(A社のX社買収の大目的はPという年商1兆円を超える大型薬を手に入れることでした)と「教育システム」があるから、大丈夫なのだと。

事の良し悪しは別として、このミッション・インポッシブルは実際に成し遂げられました。

ここで、戦略論の大家・ルメルトの「良い戦略」の条件をおさらいしておきましょう。以下の3つの問いに明確に論理的に答えられるかが要諦になります。

1.いま何が起きており、何が死活的な問題なのか<診断>

2.診断で見つかった障害物を乗り越えるのに一番必要な方向性はないか<基本方針>

3.基本方針を実行するための一貫した一連の<行動>は何か

参考:リチャード.P.ルメルト『良い戦略 悪い戦略』

ますます先の見えない世界だからこそ、判断・行動の軸としての「戦略」がより大事になってくるのではないでしょうか。そして、コロナ禍のような有事のときに、より一層、その優劣がはっきりしてきますね。

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