前回は考え方の解説でしたので、ちょっとむずかしかったかもしれませんね!
今回は自然界に見られる【創発】の事例を見ていきましょう。たぶん、これなら直感で理解できるはず。
最初はアリです。アリの巣は、何メートルもある入り組んだトンネルや小部屋がいくつにも分かれていて、とても複雑な構造のようです。
アリと言えば、集団の頂点に「女王」がいて、すべてのアリは女王のために働いているみたいなイメージがあります。ところが、女王アリは実は権威のある存在ではなく、他のアリたちに命令することもないのだそうです。
つまり、アリのコミュニティでは、命じられて一生懸命に働いているわけではなく、女王が巣の全員を産む責任を負っており、女王を安全に保つのは、すべてのアリにとって一番有利になるから。
それが驚くべき全体最適のための分散行動を生んでいるとのことです。
<アリ塚>
次に粘菌というアメーバのような原始的有機体。実験で設定した迷路の出口に食べ物を置いたところ、一番効率的な経路を見出して捕食したそうです。
粘菌は、中央に何ら脳を持っているわけではないのに!
<粘菌>
一方、われらが人間は、ちょっとでも集団になると、驚くほど単純に部分最適の行動を取ってしまいがちです。
彼らから謙虚に学ぶことがありそうですね。
参考文献:
『複雑系入門』井庭崇、福原義久
『創発デザインの概念』松岡由幸
『創発〜蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク〜』スティーブン・ジョンソン