では、自然界の【創発】現象から、私たちが学べることは何でしょう?
アリのコミュニティの集合知性についての研究者デボラ・ゴードンは、根本的な原則を5つあげています。
これは自己組織化の原則と言ってもいいのかもしれません。
【自己組織化】=混沌状態から複雑な構造が自律的に形成されてゆくこと
今回は、特に気になった3つについてご紹介します。どれも意外性に満ちたフレーズが魅力的!
1.「無知は役に立つ」
アリの言語は単純そのものだが、単純だからこそ相互作用によって、高度な創発作用が生まれるとのこと。
創発のしくみは、構成要素が過剰に複雑になると手に負えなくなるらしい。
私の実感では、人間のミーティングの中でも、なんだか複雑な議論がされているときは危険信号ですね。
それってシンプルに何を言おうとしているのかを問うていくプロセスが有効な気がします。で、そのようなシンプルな論どおしを掛け合わせる方がうまくいくということですね、きっと。
2.「ランダムな出会いを奨励しよう」
アリたちのコロニーにおける出会いは、事前に決まった命令がなされるわけではない。個別にはでたらめなものだが、個体数が多いので、それらの出会いはやがてマクロレベルでのある新たな特性を獲得するらしい。
予定調和的な方法では新しいものは生まれませんが、意外な掛け合わせの積み重ねから、まったく新たな文脈が立ち現れてくるという可能性を私も大事にしています。。
3.「ご近所に注意を払え」
現場において隣り合ったアリたちは、コロニーの全体を把握しているわけではありません。
彼らは近隣どうしで相互作用し、その反応が増えていく中で、結果としてコロニー自身が問題を解決していくのだそうです。
つまり、局所的な情報が全体的な知恵につながることがあるというもの。
よく全体像を把握してからでないと、不安で一歩が踏み出せないという人がいます。でも、未知のテーマに最初から全体が見えるなんてことはありえないですね。
とすれば、部分から小さく始めるはアリということ!
とんがり研BLOGの<理論をちょっと>編では、これから私の著作『創発ワークショップ』で取り上げた創発を生みやすい30の秘訣を一つずつご紹介してみようかと考えています。
その前段として、【創発】のおはなし(1)〜(3)を情報提供してみました。
参考文献:
『複雑系入門』井庭崇、福原義久
『創発デザインの概念』松岡由幸
『創発〜蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク〜』スティーブン・ジョンソン